耐低温脆性に優れた鉄鋼材料の創製
理工学部 機械工学科
教授 飴山 惠
理工学部 機械工学科
教授 藤原 弘
これまでにない高硬度と高靭性を有する部材を製造
「調和組織制御法」は、従来、トレードオフとされてきた高強度と高靱性が両立できる革新的な材質制御方法であり、どのような金属材料にも適用可能な普遍的な手法である。
本研究では、調和組織制御を一般構造用材料である炭素鋼に適用した事例を紹介する。炭素鋼は低温になると脆くなるという低温脆性を示す。しかし、調和組織制御を行うことで、低温脆性が著しく改善される。これにより、これまで炭素鋼の適用が困難であった低温環境での利用や、常温での高速変形(衝撃荷重)での利用が拡がることが期待できる。
新規性・優位性
低温環境下や常温での衝撃変形条件において、調和組織制御された金属材料は従来組織材料よりも靱性に優れた「強く、しなやかな」材料である。従来、必要であった添加元素を必要とせず、炭素鋼のようなありふれたユビキタス材料であっても優れた力学特性が発揮できる新技術である。
応用・活用例
- ●低温用配管・容器や、高速移動する輸送機器、例えば、自動車の安全関連構造部材の耐衝撃特性の向上。
- ●従来必要とされた稀少元素を使用せずに耐衝撃特性を改善できるため、ありふれた材料、例えば、一般構造用鋼の活用範囲が拡大し、コスト低減にも資する。
- ●図1に示すように、製造方法として一般的な粉末冶金法を応用しており、粉末の表面のみの強加工(Mechanical Milling: MM)、あるいは微小粉末との混合強加工(Bimodal Milling: BIM)の処理を追加するだけで製造できる。
- ●図2に、各種金属材料への適用事例を示す。
- ●図3に示すように、0.3wt%鋼に適用した結果、延性脆性遷移温度が約100℃も低下させることができた。