カーボンニュートラル化も実現!廃油も再利用可能なバイオプラスチック
生命科学部 生物工学科
教授 三原 久明
兵庫県立工業技術センター 材料・分析技術部
主任研究員 今井 岳志
廃油も含め、多くの種類の油を原料に安定供給が可能
様々な種類の油脂や廃油を原料に合成でき、安定供給が可能な新規バイオプラスチックを開発しました。海洋・土壌分解性も付与可能。セルロースやパルプとのなじみも良く、複合化で高強度になります。さらに、合成反応の副産物からディーゼル燃料を製造でき、製造に必要なエネルギーをまかなうことで、低炭素化・カーボンニュートラル化が可能です。
この新規バイオプラスチック(Fatty Acid-Derived Polyelectrolyte、FADP)は既存の樹脂とは異なるいくつかの実用的な特徴を有しています。FADPは親油性および親水性の両方の性質を有しており、この特徴から様々な粒子や繊維となじみが良く、既存の樹脂では分散性が課題であったセルロースや木粉などのバイオマスともよく混ざり、高強度、高弾性率な100%バイオ由来の複合材を成型可能です。さらにはエポキシなどの既存樹脂とのなじみも良く、親水性の繊維や粒子と親油性の母材を繋ぐ相溶剤としての性質も示します。例えば、このFADPの特徴を活かし難削材である炭素繊維複合材の易加工化が可能となります。FADPを賦形剤として添加した炭素繊維のプリフォームはとても硬い性質のため、型から外しても型崩れや層間の剥離をほとんど起こしません。また、この段階では脆い性質のため、木工具等で容易に切削加工ができます。その後、エポキシを含侵させることで、既存の炭素繊維複合材と変わらぬ強度が得られます。さらに、分解性を付与したタイプのFADPは海洋分解性等の環境への負荷を低減させる利点を持つだけでなく、耐熱性かつリサイクル可能な水溶性サポート材の開発を可能にします。例えば、当該の水溶性サポート材と上述の炭素繊維の易加工化技術を組み合わせることで、これまでの成型法では作製が難しい、内部に空洞を持つ、つなぎ目の無い複雑な成型品を製造することも可能となります。このようにFADPは単純な既存樹脂との置き換えを目的としたバイオプラスチックではなく、特有の利点を活かしたものづくりが可能な新しいタイプの樹脂です。
新規性・優位性
- ●廃油も含め、多くの種類の油を原料にすることができ、供給量や価格の問題を回避することが可能となり、原料の安定的な確保が可能
- ●分解性化、非分解生化を選択可能
- ●植物油を原料にした場合、製造に必要なエネルギーを含めたカーボンニュートラル化が可能
応用・活用例
- ●生産工程や流通含めてトータルでカーボンニュートラルなバイオプラスチックを製造
- ●100%バイオ由来の安定で高強度な成型品を製造可能
- ●分解性も付与できる特徴を活かし、リサイクル可能な水溶性サポート材なども製造可能
- ●様々な素材となじみが良く、炭素繊維との組み合わせでは複合材の易加工化によって製造プロセスを省エネ化
- ●既存技術では成型が難しい形状の炭素繊維複合材も製造可能